「天地ガエシ」それは二人の後悔のお話。
今日は私のいっとう好きな小説作品をレビューしようと思います。
「天地ガエシ」
作者 電柱.氏
投稿 2019/11/16
サイズ 15.67Kb(約7800文字)
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いいよ、正邪、ぜんぶ、許してあげる。
決して、私を許さないでほしい。
鬼人正邪と少名針妙丸のお話。輝針城が終わった後の二人の独白。
“許してあげる”針妙丸と、“許さないでほしい”正邪。その二人のお話です。
今更ですがネタバレ全開なのでよろしくお願いします。(レビューと言うよりも感想ダダ漏れになっています)
感想
まず、このお話は題名の通りに二人の後悔のお話と感じました。許してあげる針妙丸、許さないでほしい正邪。この二人のすれ違い、または幻想郷に反旗を翻せずに針妙丸を捨てた正邪の後悔……それらが混ざっていると思いました。
針妙丸の独白は、裏切られることも分かっていたはずなのに、たった一つ正邪と天下を手に入れて、幸せだったと思う針妙丸。そのひたむきさがとてもとても強いと思います。
分かっていたはずなのに、それでも正邪を信じている針妙丸。あの馬鹿を、下克上をしたことを嘘だと言わせない、だから信じる……それはたった一人を強く、強くさせるのでしょう。
いいよ、正邪、ぜんぶ、許してあげる。
だから、どうか、どうか――。
私に謝らないでくれ、天邪鬼――。
アンタと共に、ほんのひと時だとしても、身の丈に合わない夢を見れた。
それだけで、私はとっくに幸福だったんだ。
針妙丸はただ、正邪に幸せだったと、そう言いたいのでしょう。
次に正邪の独白。ただ「気に入らない」それから下克上を始めて、針妙丸を騙して巻き込んで。思いつきだったけれど意味は無いと分かっていても……
それがまさに正邪だと思いました。この正邪はとても、とても優しくて、道具だったはずの針妙丸に許さないで欲しいだなんて。なんて自己中心的なんだろう、それでもそばにいてくれた針妙丸に救われていたんでしょう。
私は針妙丸に対し、罪悪感なんて抱かない。私にとって、針妙丸は目的のための手段でしかない。
だから私がお前を裏切る時が来たら、その時はどうかせめて――。
決して、私を許さないでほしい。
そして、正邪と針妙丸の一方的な決別の時に、許される正邪がとても感情的で、針妙丸は正邪を信じていて。正邪は信じて欲しくなくて、感情のすれ違いだと思います。とても、とても、正邪は救われていたのだと、許してあげる、そう言う針妙丸がとても、的確だったのかな、と思います。
異変が終わって、また正邪の独白。生かされているということを自覚してしますがまさにそうなのだと、紫は無闇に殺す訳ではなく苦しみさないと言わんばかりに。私の想像ですが。
全てを諦めかけていた正邪を救ったのは針妙丸の言葉でした。「許してあげる」たったそれだけの言葉なのに。針妙丸に許されていく正邪は私はどうしても泣けてきてしまいます。倒れている正邪はそのまま幻想郷を見て、針妙丸と木の上で見た景色と同じということで笑って、思い出していく様もとても好きです。
たった一人に、たった一人の「共犯者」に。
共犯者に、「信じた」と言われたのだ。
思っていたより厳しい状況だが、彼女の言う通り、「私達」の天地返しはまだ完遂していない。
その時が来るまで、私は終わってはならない。このまま消えてはならない。
天地返しが終わっていないと叫ぶ正邪はとても生きているのだと、そう思います。
そうして最後の一行。
正邪は、生まれ変わったのだ、と……とても良い終わり方だと思います。
レビューと言うより、お話の流れとその感想を言うだけのものになってしまいましたがこのお話は本当にとても良いものです。皆さんも読んでください。私の感想なので気にせず、皆さんの思いのままの感想を作者さんに言ってあげてください。
そうして私はもう一度言いましょう。
このお話は正邪と針妙丸の二人の後悔のお話です。
いいや……言い直しましょう。
このお話は、正邪と針妙丸がこれからの幸せを掴むためのお話です。
いつか、「天地ガエシ」が成された時、二人が幸せであるためのお話だと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。作者の電柱.さん、とても良い作品をありがとうございます。本当に素敵なお話でした。
いつか、この二人が幸せを掴む時が来ますように。そんな思いを馳せるばかりです。
それでは、またどこかでお会いしましょう。
しーゆーぐっばい。